モデラーの間でこちらも根強い人気がある。
筆ムラが起きにくく、伸びも良い。ただし溶剤によるパーツ割れ被害の報告が1番多いのも事実。取り扱いには十分注意が必要。
環境
エナメル塗料はラッカーと比べて低害な塗料と言えるが、有害な塗料であることは否めない。換気はしっかりとする必要がある。換気扇のある部屋で行うか、塗装ブースなどにより換気設備を設けるほうが良い。
個人的なことで申し訳ないが、自分はエナメルの匂いが苦手で、ラッカー塗料の匂いよりも気分が悪くなる。個人差があるが、そういう人は少なくないので気をつけるべき点である。
希釈
瓶に直接筆を入れて、塗り始めるユーザーも居るほど希釈を必要としない。
自分自身、現在は塗り分けにしかエナメルを使わないので、取り出す時に筆を使い、塗料皿に取り出し伸び具合を確認する、その時、硬いなと感じたら瓶に直接溶剤を1滴垂らしては様子を見て、1滴垂らしては様子を見てと粘度を調整している。
希釈のし過ぎは乾燥時間に直結する。くれぐれも希釈には気をつけてもらいたい。
特徴
重ね塗りの可否など、基本的な解説はこちら
固化した塗料は復活不可
エナメル塗料は空気と化学反応をして塗膜を形成する。
このため未使用の塗料でも固化したものは、シンナーで溶かしても塗料として使用することはできない、化学変化を促進させないよう空気に触れさせないことが重要なので、他の容器に出して使用し、瓶の蓋を必ず閉めるようにしよう。
乾燥には十分な時間を
エナメル塗料はその構造上表面から徐々に塗膜を形成することになるので、乾燥したかのように見えても中は塗料のままだったりする。いわゆる生乾きの状態が長い。ラッカーに慣れていると、思わぬしっぺ返しを食らうことになるので、十分な乾燥時間を設けること。
メーカーによっては、「80度のオーブンで2時間」とアナウンスしているとも言われるが未検証。ただ、それぐらい乾燥には時間がかかることを覚えておこう。
筆ムラが起きにくい
エナメル塗料は非常に伸びがよく、乾燥時間がかかることから筆ムラが出にくい。このため筆塗り派の方には支持されている塗料だ。
他社製品は混ぜられない
エナメル塗料も各社で内容が違うらしく、他社やシリーズで内容が変わるので、他社製品を混ぜ合わせることは基本的にできないと理解しておこう。
初心者にエナメルを勧めない理由
当サイトでは初心者による、エナメルでの基本塗装をおすすめしていない。
各塗料を比較した場合
プラへの食付き
- ラッカー塗料が一番
- エナメル、水性塗料、エマルジョン塗料は互角
重ね塗りの可否
- ラッカー塗料、エマルジョン塗料が2トップ
- エナメルは3番目
有害性
- ラッカー塗料が一番
- エナメル塗料はラッカー塗料に次いで2番目
- 水性アルコールやエマルジョンはエナメルと比較しても安全
3つの面から比較して、エナメルを基本塗装に選ぶメリットが見当たらない。
理屈を上げれば以上が理由となるが、初心者におすすめしていない、初心者ならではの理由がもう一つある。
初心者は失敗しやすいのが当然である。塗装技術は失敗を繰り返しながら上達するものである。
失敗すれば、失敗した塗装を剥がしたくなるのは当然のことである。そうなると溶剤の力を借りたくなるのが人情というもの。
しかし、エナメル溶剤は他の溶剤と比較して、危険な溶剤と言える。
すべての溶剤はプラを侵食しパーツ割れなどを引き起こすのだが、エナメル溶剤は結果的にプラを侵食しやすいといえる。
色数が少ないというエマルジョン系のデメリットは、エマルジョン塗料を下地として使い、エマルジョンの塗膜の上からエナメル塗料を塗れば、比較的安全に使え、調色の手間も省けて一挙両得となる。
失敗したときはエマルジョンならその都度水を含ませた綿棒で修正できるし、エマルジョンの塗膜の上ならエナメル溶剤も使える。
ちなみに、アクリジョンならABSへの塗装も可能だ。
こういった理由からエナメル塗料を基本塗装に使うぐらいなら、エマルジョン塗料を基本塗装に使い、部分的にエナメル塗料を使いこだわりを出していくほうがメリット満載である。
エナメルを使っていれば上級者というわけでもないし、エナメルを使えばすごいということもない。他の塗料で基本塗装を行い、安全にエナメルに慣れていけば良いと思う。
最後に、これはあくまでも”初心者”の話である。エナメル愛好家に対する批判ではないことを付け加えておく。
川口名人(バンダイスピリッツ社員・川口克己氏)によるエナメル溶剤の危険性に対する言及(59分40秒頃)