スミ入れとは凹モールド(パネルラインとも言う)に、何かしらの色を入れて情報量を増やすことで、模型の見栄えを良くする手法である。
ガンプラでは1/144で0.2mmぐらいの太さがあり、単純計算で28.8mm(3cm弱)の太さのラインということになる。実際にパネルラインが3cm弱もあったら現実なら大騒ぎだ(笑)。もちろんこれはデフォルメによるものだが、それだけ太い線が入っているのだから、こいつの料理次第で良くも悪くもなる、ということは明白だ。
また、スミ入れはウォッシングの一部と捉える考え方や、シェーディングの一部と捉える考え方だ(シェーディングをウェザリングの一つとして捉えるか否かという論点もあるが)。ウェザリングは人によって定義が違うのでざっと概要から説明し、具体的なスミ入れの解説へと入っていきたい。
概要
まず「ウェザリング」は「汚れ塗装」ではない。日本語訳が「汚し塗装」であるために誤解する初心者は多い。本当の意味は「風化」。塗りたて塗装を汚して風化した味をつける塗装アレンジ法だ。転じて基本塗装をアレンジするもの全般を指す言葉として使われる傾向もある。
ウォッシング、チッピング、フィルタリングなどの言葉もあるが、現在は複雑に絡み合っており人によって「これはフィルタリング」「いやウォッシング」ということもある。
代表的なものは、だいたい以下のように使われている。
- ウォッシング
全体に薄い色を塗装し、ホコリ、チリ、土や砂といった汚れを表現する。剥がし方で雨だれなどの表現を加えることもある。
パネルラインに詰まったホコリや砂などを表現して、スミ入れを同時に行う。 - チッピング
局所における傷、塗装ハゲなどの表現に用いられる。 - フィルタリング
全体に薄い色を塗装し、色調調整を行う。主に全体の色味に統一感をもたせる意味や退色感を出したり、色味の強調に使われる。複数色使う場合もある。
フィルタリングは基本塗装という人もいるが、フィルタリングによる退色表現もできる。 - シェーディング
主に影や陰を落としていく手法。スミ入れはここで行う場合もある。
シェーディングをウェザリング入れるのは個人的には疑問も感じるが、スミ入れの一環として。
つまり、スミ入れはここに上げただけで2つの目的がある。またその他にも考えられる。
スミ入れの目的別色選択のヒント
汚れ表現
汚れ表現はたいていウォッシングと共に行われるので、ウォッシングの色ということになる。単体で行う場合でも地色(基本塗装色や成型色)に関係なく、チリや砂などを連想させる色ということになるだろう。白っぽいやや曖昧な色が適してる。
影や陰
影としていれる場合はやわかい色。地色(基本塗装色や成型色)によって薄い色ならグレイとかブラウンになるだろうか。濃い色なら黒かな?
陰として入れるなら地色(基本塗装色や成型色)よりも少し暗めの色となる。地色(基本塗装色や成型色)に近い色を、青または黒辺りを混ぜて調色するのも有り。
この場合の注意として、強い色を入れてしまうと模型を見せたいのか、スミ入れ線を見せたいのかわからなくなってしまい、見るものを惑わせることにつながる。
強調として
ガンプラを始めSF・ファンタジー物などに使える技として強調するというのもあり。
例えば、サイコフレームの擬似的表現として、パネルラインから漏れる光を表現する、例えば蛍光色とか、クリア色などを使ってみる。シルバーなどメタリック色も良いと思う。
その他、全体の配色によって強調する色を決めていくなど。
この場合の注意として、強調してしまうので目的がしっかりとしていないと、単なる2トーンに見えてしまう危険性もある。
ドライブラシで周囲を明るくする
光やホコリ表現をドライブラシで施す事により、パネルラインを強調するというやり方。
スミを入れせずにドライブラシにより、地色(基本塗装色や成型色)を生かして表現するという手段である。
このケースでは前述した手法を組み合わせて使うこともできる。
スミ入れに使える塗料
シャーペン・色鉛筆
塗料と言いつつ、いきなり別物なのだがシャープペンシルや色鉛筆なども有効なスミ入れ方法である。塗装した場合は塗膜を傷つける恐れがあるが、素組(パチ組み)の場合はパーツ割れを起こす心配もなく安心して使える。
水性ペン
ガンダムマーカースミ入れペンを始め、水性ペンでスミ入れできる。ものにより拭き取りが難しいタイプも存在するので、自分で事前にテストを行うこと。
油性ペン
ガンダムマーカー スミいれを始め、油性ペンの中には消しゴムで修正できるものがある。こちらも無塗装のパーツならスミ入れが可能だ。どれでもできるわけではないので、必ず使用前にテストを行う事。
消しゴムはプラを侵食するので、消す際に出たカスは完全に取り除くことが肝心。
ガンダムマーカー 流し込みスミ入れペン
こちらも素組(パチ組み)専用となるが、ペンタイプの流し込みタイプのスミ入れ用塗料。バラ売りはブラック、グレイ、ブラウンの3色だが、セット販売ではブルー、オレンジ、オリーブがある。
Mr.ウェザリングカラー
プラを侵しづらいウェザリング塗料として販売されている。侵さないわけではないので注意。自分はどれぐらいまでいけるのか試したのでだいたい把握しているが、侵しづらいが侵さないわけではない。素組(パチ組み)で使うには慎重に。
また、Mr.ウェザリングカラーは完全乾燥してしまうと拭き取り困難になる場合もある。半乾きの状態で拭き取るようにしよう。
パーツ割れ対策は以下のページを参照してほしい。
なお、Mr.ウェザリングカラーの蓋に筆をつけることも可能。筆が必要ならば別売りしている
エナメル塗料
古からスミ入れに使われているスミ入れ塗料。溶剤で数倍に希釈することが必要なので初心者による使用は、当サイトではおすすめしていない。
使用に際して以下の注意点を守ろう。
- 他の塗料の塗膜の上から使用すること
- 合わせ目をモールド化してある箇所には使用しないこと(完全接着した場合はこの限りではない)
合わせ目は塗膜の上からのつもりでも、隙間から回り込む可能性があるため完全接着を条件とした。
他の注意点は以下のページを参照してほしい。
水性塗料
こちらもスミ入れ塗料として使える、が注意が必要。アルコールは他の有機溶剤と親和性があるので、塗膜を侵しやすい。
無塗装の場合、基本的にはパーツを侵しづらいのだが、エナメルほどでは無いが侵さないわけでは無いので注意が必要となる。特に隙間から回り込む可能性があるため、合わせ目をモールド化してある箇所などには注意が必要である。
注意点は以下のページを参照してほしい。
実践
実際のスミ入れのやり方については以下のページで解説している。